平成27年5月1日会社法一部改正のお知らせ

(1)社外取締役及び社外監査役の定義が変わりました!

そして、「非業務執行取締役等」という概念が生まれました。

 

社外取締役は、過去のしがらみや現在の業務執行からは独立した公正中立的な立場で経営者を監督する役割が期待されています。

これまで社外取締役は「株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう」とされ、社外監査役については「株式会社の監査役であって、過去に当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう」とされていました。

 

改正前は「過去に」一度でも会社及び子会社の業務執行に従事した者は社外取締役になれませんでした。

しかしながら、過去に当該会社の業務執行に携わったことがあったとしても、その後当該会社や子会社との関係が切れていれば社外取締役としての職務ができるのではないかとの指摘や、会社の業務執行者の親族や親会社・兄弟会社の業務執行者が社外取締役になると公正中立の立場で経営者に対する監督を期待することは難しいとの指摘もありました。

そこで、今回の改正により社外取締役の要件を変更し、「当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人(業務執行取締役等)でなく、かつ、その就任前10年間当該会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと」等になり、「過去」の要件を「就任前10年間」に緩和する一方、親会社の関係者や兄弟会社の業務執行者、会社の一定の業務執行者等の近親者などは、社外取締役になることはできないことになりました。

 

社外取締役とともに、社外監査役についても同様に要件が改正されています。

この社外取締役・社外監査役の定義の変更に伴い、責任限定契約(会社法第427条)の対象も「社外取締役、会計参与、社外監査役又は会計監査人」から「取締役(業務執行取締役等であるものを除く)、会計参与、監査役又は会計監査人」(非業務執行取締役等といいます。)へと変わり、「社外」かどうかではなく、「業務執行」を行うかどうかが基準となりました。

 

これにより責任限定契約を根拠とした社外取締役及び社外監査役の登記については登記事項ではなくなりました。附則22条2項により、「当該登記に係る取締役又は監査役の任期中に限り、当該登記の抹消をすることを要しない」とありますので、直ちに登記を抹消する必要はありませんが、任期中でも任意に抹消することは可能です。

 

(2)会計限定監査役である旨が登記事項になりました!

 

これまで、監査役を置いている株式会社の登記事項証明書には、「監査役設置会社」である旨が登記されていましたが、そもそも監査役の監査は、「会計監査」と「業務監査」とに分けられます。

 

「会計監査」とは、取締役の職務の中でも会計に関する職務の執行を監査することをいい、会計帳簿の調査をして、株主総会に提出する貸借対照表や損益計算書、営業報告書など会計に関する書類などの監査を行います。

 

「業務監査」とは、取締役の職務執行を監査することをいい、取締役の職務執行が法令や定款などに違反していないか、著しく不当でないかなどが業務執行の対象となります。

 

このように、監査役の権限としては2種類の監査があります。一定の要件を満たした株式会社では、定款で監査役の権限を会計監査のみに限定することもできます。一概に監査役といっても、「会計監査のみを行う監査役」と「業務監査まで行う監査役」がいるのです。

ところが、株式会社の登記事項証明書にはこの区別がされておらず、当該監査役がどちらに該当するのかは、登記事項証明書を見るだけでは判断できないという問題がありました。

 

例えば、株主が取締役の責任を追求するために訴訟(株主代表訴訟)を提起する前提として、業務監査権限のある監査役に対して訴訟提起を請求することになります。登記されている監査役が業務監査権限のある監査役なのかどうかは登記事項証明書を見ても判明しないため、定款を見て判断することになります。株主は、訴訟提起する会社に対して定款の閲覧請求権を行使して、定款を見れば分かるので問題はないのではないか、と考えられるかもしれませんが、実際には閲覧請求権に会社が容易に応じるとは限らず、慣れない手続には手間と時間がかかります。

 

今回の改正では、監査役の監査権限について会計監査限定の定款の定めがあることが登記事項とされました。登記事項証明書の監査役の氏名の下に、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」と記載されます。

 

注意点は、会計監査限定の旨の登記は、監査役の就任・退任登記を改正後に初めてする時まで猶予されています。そのため、会計監査限定の監査役がいても、その監査役がまだ任期の途中であれば、あえて会計監査限定の登記のみを今すぐ単独でする必要はありません。しかし、役員の変更登記をする際にこの会計監査限定の登記を忘れずに登記をする必要があります。

なお、登録免許税は役員変更の登記と同時に申請すれば、役員変更分のみの登録免許税で足り、別途会計監査限定の登記にかかる登録免許税はかかりません。

 

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