相続税対策で2歳の孫を養子にしたけれど?予想外のできごとが!!

相続人が増えると相続税を計算する際の控除額が増えるので、相続税対策としてお孫さんを養子にされることがあります。その方がお亡くなりになられた際、どのような問題が生じるでしょうか?相続人が増えるだけでしょう?とお考えの方、少しお耳をお貸しください。

 

【事例】太郎君は二郎さんと三代さんの間の子供です。太郎君の親権者はお父さんの二郎さんとお母さんの三代さんの二人です。親権者とは太郎君の(1)財産管理と(2)身上監護をする人です。成年後見人の業務と似てますね。でも、親権者の任務は、子供が財産を持っていることは少ないですから、法律行為の代理をすることと、身上監護(未成年の子を監護、教育し、一人前の社会人となるまでの養育する親の権利と義務)が中心です。身上監護の中には、成年後見人の業務には含まれない、居所指定権、懲戒権、職業許可権も含まれ、成年後見人以上に責任は重大です。

さて、夫から多額の遺産を相続した二郎さんの母の俊子さんが、平成20年節税対策のために孫の太郎君(当時2歳)と養子縁組をしました。その結果、俊子さんの子供は2人から3人に増えました。しかし、養子縁組の本来の目的は、太郎君と俊子さんとの間に法律上の親子関係を作ることですから、養子縁組と同時に、太郎君の親権は二郎さんと三代さんから俊子さんに移ります。

 

そこで質問です!

Q:俊子さんは太郎くんが5歳のときに亡くなりました。二郎さんと三代さんの太郎君に対する親権は復活するでしょうか?

 

A:実の親が存在するのだから、復活するだろうと考えがちですが、親権は二郎さんと三代さんには戻らず、復活はしません。そのため親権を行使する者が不在となり、太郎君には親権者がいない状態となります。ところが、太郎君は俊子さんの相続人ですから、俊子さんの遺産について、一郎さん、二郎さんと一緒に三人で遺産分割協議をしなければなりません。5歳の太郎君は未成年者ですから遺産分割協議をするためには法定代理人が必要です。親権者がいない場合、未成年後見人を選任する必要が出てきます。未成年後見人とは、未成年者に対して親権を行う者がいないとき、または、親権を行う者が管理権(財産に関する権限)を有しないときに、法定代理人となる者のことです。「親権が復活しない」とは「親権を行う者がないとき」、に該当し、家庭裁判所で未成年後見人を選任してもらわないといけないことになります。二郎さんと三代さんを未成年後見人の候補者として申立てをすることはできます。でも、100%確実に二郎さんと三代さんが未成年後見人に選任されるかどうかは分かりません。

 

その解決策として、俊子さんと太郎くんが「死後離縁」をすれば、二郎さんと三代さんの親権が復活します。養親と養子のいずれか一方が先に死亡した後に生存当事者が離縁を望む場合には家庭裁判所の許可を得て離縁をすることができます(これを「死後離縁」といいます)。この死後離縁の手続きは家庭裁判所でしなければなりません。

 

そうです!未成年後見人の選任でも、死後離縁でも、どちらにしても家庭裁判所での手続が必要となります。

 

Q:では養父母が死亡し相続が生じた後に死後離縁をした場合には、養父母の死亡により生じた相続権はどうなるのでしょうか?

 

A:せっかく相続人を増やすために養子にしたのに、死後離縁と同時に相続権もなくなってしまうのでは…?と心配ですよね。

しかし、一旦生じた相続権には何等影響はなく、死後離縁の後も相続人の地位は失われません。養親子関係に基づき既に生じた相続における相続人の地位は影響を受けないのです。従って、太郎くんは俊子さんの財産を相続することが出来ます。ただし、養父母死亡後に養子が死後離縁手続きをすると、縁組先の兄弟姉妹との親族関係は喪失しますので、養子及び縁組先の兄弟姉妹いずれが死亡しても相続権は発生しないことになります。この場合、太郎君は、配偶者も子供もいない叔父の一郎さんの相続人になることはできません。

 

親権と相続権、複雑な関係にあります。ご注意ください。

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