後見人に全財産を預けて大丈夫? -託した財産はどのようにして守られるの?-

成年後見制度は認知症、知的障がい、精神障がいなどの理由で判断能力が不十分となった方(以下、「本人」といいます)の生活を支援し、保護するための制度です。

 

その制度の担い手である後見人の仕事は、まず以下の5つです。
①本人の今置かれている心身の状態や生活状況を把握する。
②本人の希望を聴き、或いは意思が表明できなくても本人が望むであろうことを慮る。
③本人の心身の状態に合わせて生活の場(自宅がいいのか施設がいいのか、施設であればどのようなところが適切なのか)を考える。
④③を考えた上で収支バランスのとれた生活設計を立てる。
⑤介護事業者との契約、施設との契約等必要な代理行為を行い、本人の財産を適正に管理し、併せて身上監護に務める。

 

 

後見人は本人の全財産をお預かりします。
後見人は本人の銀行の預金、投資信託、株、不動産等全てについて包括的代理権を持ち、処分する権限もあります。
気が付いたら後見人がご本人の財産を食いつぶしていたという事件も多くあります。
それでは安心して老後を後見人に託すわけにはいかないのではないかと不安に思っていらっしゃる方も多いと思います。

 

通常、判断能力のある人が他人に自分の財産管理を頼んだ場合、委任者は受任者が不正をしていないかどうかチェックできます。
契約はお互いが履行を確認することで成り立っています。

 

しかし、本人の判断能力が低下してからスタートする後見人の仕事は、本人が後見人を監督することができません。
そこで、法定後見制度では家庭裁判所が後見人を選任し、後見人が不正を働いていないか、間違った業務をしていないかどうか家庭裁判所が原則年に1回チェックします。

 

本人が契約であらかじめ後見人を決めておく任意後見制度では契約の効力は家庭裁判所が任意後見監督人を選任してから発生し、任意後見監督人が任意後見人の業務を監督する仕組みがとられています。

 

成年後見制度が始まった15年前は選任される成年後見人の9割は子供、配偶者、兄弟姉妹等親族でした。
ところが、親族後見人による横領事件が多く、発覚したものだけでも1年間の被害総額は45億円前後に上っています。
そのため、平成26年の最高裁の発表によりますと、親族後見人の割合は35%まで下がっております。
それに比して、司法書士、弁護士、社会福祉士等の専門職後見人の割合が増加しています。
また、最高裁は横領防止のため、親族後見人に対し、『後見制度支援信託』を利用するという運用を始めました。
後見人に2、300万円の手持ち資金を残し、それ以外は全て信託銀行に信託し、信託した財産は裁判所の許可がないと出金できない仕組みです。
もちろん、本人のお金ですから、本人のために使用するという正当な目的、例えば「有料老人ホームの入所一時金」「本人のためのリーフォーム資金」等のためでしたら許可されます。
その他、管理財産に不動産等ある場合は弁護士、司法書士などの専門職の監督人を付けることもあります。

 

では、専門職後見人は大丈夫かというと100%大丈夫とも言い切れません。
新聞紙上でご覧のとおり何件かの横領事件は発生しています。

私が所属している、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートは、1999年、全国の司法書士が集まって設立しました。
「質の高い後見人の養成」と「後見人の指導監督」を主な公益目的としております。
私たちは専門職後見人として継続的に研修を受け、6か月ごとに財産目録、通帳の写し等を報告し、指導監督を受け、1年に1回裁判所に同様の報告書を提出し監督を受けています。
さらに、LSシステムという会員を管理、指導、監督するシステムを構築し、複数の目で不正への監視をし、不正の根絶に向け努力しています。

後見業務は裁判所から委託された公的仕事です。

 

親族でも横領罪が成立します。
ましてや、他人である私たちがこのような大きな仕事を任されることに謙虚になり、畏れをもつべきと考えています。
後見人となることに資格は必要ありません。
今、多くの人たちが後見分野に参入しようとしています。

 

自分で将来判断能力が低下した時のために予め後見人を選んでおく任意後見契約や財産管理等委任契約等を締結する場合、慎重の上にも慎重に行ってください。全てを任せられるところは便利なようで他者のチェックが入らない危険もはらんでいます。
虎の子の財産を託すのです。信用出来る機関でのご相談をお勧めします。

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