権利証からパスワードの時代へ・・・

 

平成15年の3月7日、不動産登記制度を高度情報化社会にふさわしい制度とする目的で、105年ぶりに不動産登記法の全面改正(以下、「新法」といいます。)が行われました。登記の分野にもようやくインターネットを利用したオンライン申請の手続きが導入されることになりました。

 

私は当初、世界にも誇れる日本の登記制度を、何故、機械に法が歩み寄る形で改正するのか理解できませんでした。しかし、九州大学の七戸教授は「不動産登記の電子化の立ち後れは、世界における日本の格付けそのものを低下させる結果となっている。」といわれます。

 

不動産の証券化等土地取引の形態も急激な変化を遂げている昨今、世界の人に日本の登記制度を理解してもらうためには、もはや電子化の流れに掉さすことはできないのかもしれません。

 

一般の方にとって最も関心があるのは、「権利証が無くなったってホント?」ということだと思います。改正前の不動産登記法(以下、「旧法」といいます。)では、登記が完了すると不動産の権利を取得した人には登記済証(いわゆる「権利証」)が交付され、次にこの不動産を売却したり担保にいれたりするときには本人確認手段の一つとしてこの登記済証の提出が必要でした。

 

新法では登記完了後に登記済証は交付されず、「登記識別情報」という、12桁の英数字を組み合わせた情報(いわゆるパスワードのようなもの)が登記所から提供されることになります。どうしてそうなったかというと、インターネットで手続きをするには、紙でできている登記済証の存在は邪魔で、それを紙から情報に代える必要があったからです。

 

ご注意いただきたい点は、今まで交付されていた登記済証が無効になるわけではなく、オンライン指定庁になるまでに発行された登記済証は、オンライン指定庁になった後も、その権利を移転しない限り、何年たっても有効な登記済証として扱われることです。ですから、絶対に権利証を捨ててしまわないで下さいね。

 

ところで、「登記識別情報」の運命ですが、正直なところ私にもわかりません。登記済証と違って、登記所に対し、「いらないよ」「もらったけど失効させて」ということもできます。カード情報の流出等のニュースを見るにつけ情報の厳重な管理は果たして可能なのか疑問です。

 

次に、新法施行と同時に全ての登記所で売買契約書、抵当権設定契約書、遺産分割協議書等の登記原因を証明するもの「登記原因証明情報」が登記申請に必須の添付書類となりました。このような書面や記録を作成することにより、後日の紛争を防止する効果が期待できます。

 

また、旧法下では登記原因の有効性を確認する具体的な資料は何も登記所に残っていませんでしたが、これは登記所に保管されることになりましたので、利害関係人はその閲覧を通して登記の真正を確認することができるようになりました。将来、裁判の有力な証拠として威力を発揮するかも知れません。

 

その他の主な改正点として、当事者出頭主義が廃止され、郵送でも登記申請ができるようになりました。保証書制度が廃止され、新たに事前通知制度、資格者代理人による本人確認情報の提供制度ができました。

 

不動産登記も商業登記もその登記されている内容はパソコンで簡単に取得できるようになりました。一足先に始まった商業登記のオンライン申請は使い勝手がよく愛用しています。一方、新法の眼目である不動産登記のオンライン申請の普及はしばらく時間がかかりそうです。

 

一つの取引に係わる全ての個人や法人は、各々住基カードや電子認証カードを取得する必要があります。システム自体も複雑怪奇で前途多難です。でも、後戻りはできません。法改正に対し守旧派といわれた法務省と司法書士は協力して国民の権利の保護に寄与できる最善の道を探っていく責務があると思っております。

 

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