敷金返還請求が難しくなりました ~不当に高額でなければ特約は有効~

 

賃貸マンションなどを借りる際、初期費用として敷金や保証金等を支払うケースは多いと思います。しかし、近年、敷金に関するトラブルが増えており、それらの返還を求めて訴訟に発展するケースも見られます。

 

 敷金は全額返還が原則です

そもそも敷金とは、賃貸借契約の借主の債務を担保するために貸主に交付する金銭をいいます。具体的に言いますと、入居者が家賃を滞納したり、故意・過失で損耗してしまった等といった債務不履行が生じたにもかかわらず、貸主が入居者から損失を埋め合わせしてもらえなかった場合に、その分を敷金から差し引くというものです。残額を明け渡し時に借主に返還することになっています。もし上記のような事情がなければ、全額返還されるのが原則です。逆に言うと、故意・過失でなく自然に損耗した分の補修費用は、貸主の負担になります。補修費用は家賃の中に入っているようなものです。

 

●自然に損耗した分の補修費用・・・家賃に一体で含まれる(貸主負担)
●故意・過失でなく自然に損耗した分の補修費用・・・敷金で担保される(入居者負担)

 

敷引特約は原則違反?

しかし、建物賃貸借契約の中には、契約終了時に敷金の中から一定額を差し引く旨の特約が盛り込まれているケースがあります。例えば敷金40万円、敷引20万円であれば、入居者に債務不履行がなければ、契約が終了して建物を明け渡した時に、40万円から15万円を差し引いた25万円を返還するというものです。

 

敷金であるならば本来ならば敷引額も返還されるのが原則ですが、敷引特約の性質については、礼金、普通に使用していれば当然についてしまう汚れや毀損の修理費。(クロスのテレビ焼けなど。以下通常損耗の補修費用といいます)、入居者が貸主に更新料を免除してもらったことへの対価、家賃を安くすることの代償、空室損料などの要素が一体となっているものと解されています。要するに、敷引の15万円は礼金や更新料などの一部のようなものなので敷金として返す必要はない、という考え方で、敷引は正当化されていたのです。

 

最高裁の判決は・・・

この敷引特約につき、「消費者の利益を不当に害する契約は無効」と定める消費者契約法に違反するのではないかという疑問があり、特約の有効性をめぐって訴訟が提起されていました。事案は、京都市内のマンションの1室の入居者が、敷引特約で差し引かれた金銭の返還を求めたものです。内容は

●家賃は月9万6000円
●賃貸期間は平成18年8月から平成20年8月まで(2年契約)
●敷金40万円
●敷引特約として、経過年数に応じて18万円~34万円を差し引く

というものでした。

 

これについて最高裁は、今年3月24日、無効とはいえないと判断しました。理由としては、

 

① 通常損耗等の補修費用を敷引金として授受する特約が成立している場合は、補修費用は賃料には含まれていないとみるのが相当であること。
② 通常損耗等の補修費用に充てるために貸主が一定の額を入居者から受け取ることは、通常損耗の補修が必要かどうかの争いや具体的な金額をめぐる紛争を防止する観点から、不合理とはいえないこと。
③ 敷引額が、契約の経過年数や建物の場所、専有面積等に照らして、通常損耗の補修費用として通常想定される額を大きく超えるものとまではいえないこと。
④敷引額が月額賃料の2倍弱ないし3.5倍強にとどまっており、借主は契約が更新される場合に1か月分の賃料相当額の更新料の支払義務を負うほかには、礼金等他の一時金を支払う義務を負っていないこと。

 

要するに、敷引特約は通常損耗等の補修費用の額として異常ではないのであれば、貸主と入居者の間で合意がある場合は、その敷引特約は無効ではない、というわけです。

 

ただ、どのような場合でもこのように解しているわけではなく、敷引金の額が高額に過ぎる場合には、消費者である借主の利益を一方的に害することになり、無効となる可能性があるとも述べています。いずれにしても、将来のトラブルを防止するためにも、賃貸住宅を借りる際は契約書をよく確認し、納得した上で締結することが重要です。

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