120年ぶりの民法大改正 -いま、民法の改正が進められています-

民法は、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与える法律であり、詳しい内容は知らなくても名前を聞いたことがある方も多いかもしれません。平成28年現在の民法は、約120年前に制定され、細かい改正は何度か実施されたものの、抜本的な改正は行われてきませんでした。その間に社会や経済は大きく変化したため、民法が現代社会にそぐわない部分もあり、民法の中でも主に「債権」の部分で抜本的な改正作業が進められています。

 

(1)-保証人の保護-
1.保証人の保護が拡充されます

 

「保証人」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。保証人は、主たる債務者(実際にお金を借りる人)がその債務を履行しないときに、その履行する責任を負うとされており、その範囲は主たる債務に関する利息や違約金、損害賠償なども含まれるという非常に重い責任を負っています。中には、親戚や知人から頼まれて断りきれなかったり、保証人という立場をよく理解しないまま保証人になったケースも少なくないと思われますが、主たる債務者が支払い不能に陥ると、保証人に対して多額の請求がなされ、保証人がその責任に耐え切れずに破産したり、最悪の場合は自殺に追い込まれたりすることもありました。
そこで、改正民法では、①事業用の金銭の借入等について、②個人が保証人になる場合には、③保証契約の前1か月以内に公正証書を作成し、保証人が保証の意思を表示しなければ、原則として保証契約は無効になるとしています。また、その公正証書には、主たる債務の元本だけでなく、利息や違約金、損害賠償などの従たる債務なども記載する必要があります。
例外として、主たる債務者が法人である場合に、保証人が当該法人の取締役や理事である場合(経営者)や当該法人の議決権の過半数を有する者である場合(大株主)には、適用されません。主たる債務者が個人事業主である場合に、保証人が共同経営者である場合や主たる債務者の事業に現に従事している配偶者である場合も同様です。

また、この制限は、事業用の金銭の借入を対象としており、個人の住宅ローンや賃貸住宅の家賃の保証人などは対象外となっています。

 

2.その他の保証人の保護

 

前述のとおり、保証人は非常に重い責任を負うことになるため、事業に関する債務の債務者や債権者は、保証人に対して情報提供義務を負うことになります。
保証契約締結時においては、事業に関する債務の債務者は、債務者からの委託を受けて保証人になろうとする個人に対して、債務者の財産及び収支の状況や他に負担している債務などの情報を提供しなければなりません。
また、保証契約締結後においては、債権者は、債務者から委託を受けた保証人に対し、元本及び利息、違約金、損害賠償などの不履行の有無やその残額などの情報を提供しなければならないとされました。
もし、債務者が返済を怠ったことにより期限の利益を喪失した場合(残額を一括返済しなければならなくなった場合)は、債権者は、それを知った時から2か月以内に個人の保証人に対して、その旨を通知しなければなりません。

 

(2)売買契約における買主の権利

 

これまで、デパートで買う新品のエルメスのバッグと質屋さんで買う中古のエルメスのバッグでは、隠れた欠陥があった場合の取り扱いが異なっていました。
平成28年現在の民法では、売買の目的物に「隠れた瑕疵」(不具合)があった場合には、買主は売主に対して一定の責任を追及できる旨の規定があります(瑕疵担保責任)。ただし、この規定は、売買の目的物が特定物(中古品や土地建物など物の個性に着目した代替品のない物)か不特定物(一般に販売されている製品など代替性がある物)かによって請求できる内容が異なり、それについて学説の対立もあるなど、非常に分かりにくい規定になっています。
例えば、新品のバッグを買った時、欠陥があった場合は修理の請求や交換を請求できます。それに対して、中古品の場合は、買主は現在の状態を納得して買ったのだから、たとえ欠陥があったとしても売主はその状態で引渡せばよい、たとえ責任を追及できたとしても、契約の解除又は損害賠償請求に限られ、補修や代替物の請求はできないとされていました。
そこで今回の改正では、「瑕疵」という難しい表現から「契約の内容に適合しない」という表現に変更します。また、売買の対象が特定物か不特定物かの区別をなくし、目的物の補修や代替物の引渡し、損害賠償の請求ができるものとしています。さらに、代金減額請求も認められています。なお、代金減額請求については、原則として「買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないとき」に限り請求できます。

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