外国人の妻の相続上の地位

 

1.相続の3つのポイント

 

日本人だけの相続でも「相続人が誰か」「相続財産はどれだけあるのか」の特定には時間がかかるものです。特定できた後も、相続財産をめぐり相続人間で何年も不毛な争いが続くことがあります。
相続で大切なポイントは次の3点です。

 

(1) 「相続人は誰か」
調べてみると、依頼者の知らない相続人の存在が明らかになることが年に2,3件あります。外国人の場合、婚姻、出生、認知、連れ子の養子縁組等の法的手続きが不備なくなされており、そのことが書類できちんと証明できることを予め確認しておくことが大切です。外国人には戸籍がありませんから、親族関係の証明が困難なことがあります。夫の婚姻前の経歴、「先妻との間に子供があったのか」「認知している子供はいないのか」等は夫婦関係の円満なうちに確認しておきましょう。

 

(2) 「相続財産はどこに何があるか」
夫が健在なうちに資産・負債の詳細、保管場所を聞いておくべきです。外国人の場合、夫との年齢差があり、夫が財産管理している場合が多いので、夫亡きあと、手探り状態で相続財産を明らかにしていくことは言葉の壁もあり至難の業です。

※注意!! 相続財産はプラスの資産ばかりでなく、マイナスの負債も含まれます。借金ばかりであればぐずぐずしていられません。
相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申立をする必要があります。また、夫が会社の経営者で会社の借金の連帯保証人となっている場合、相続人は連帯保証人の地位を相続しますから、同様に3ヶ月以内に熟慮期間の伸長の申立をしなければならない場合があります。
この手続きは外国人であっても、日本の家庭裁判所でできます。

 

(3) 夫に遺言書を作成してもらう

相続財産の分け方は
①遺言があれば遺言書に書かれた内容が最優先
↓遺言がなければ
②相続人全員で遺産分割協議
↓協議が整わなければ
③法定相続分による(遺産分割調停など)

 

※注意!!、①②の場合でも債務(負債)については債権者(ex.貸付人)の承諾を得ない限り債権者に対して、①②の内容を主張できず、法定相続分通りに各相続人が負担することになります。

 

遺言書は決して万能でありませんが、遺言があればその内容が最優先されますので相続争いを回避する最善の方法といえます。遺言内容は法定相続分と関係なく決めることができますが、遺留分などの考慮はしておきましょう。子供のいない外国人の妻は、遺産分割について、夫の親族(両親、兄弟姉妹)と交渉しなければなりませんが、それは日本人以上に大変なことだと思います。

 

相続は、前提が間違うと元も子もありません。相続人が他にいたり、相続財産に含まれないものがあったり、遺言が法律に則った書き方になっておらず無効になったり。お亡くなりになられた後からの修正は効きません。せっかくの準備も、水の泡となってしまいます。
費用は掛かっても、夫が元気で夫婦仲が良好なうちに、専門家にご相談されることをお勧めします。

 

2.夫が日本人である場合の相続

 

【日本にある財産について】
相続には日本の法律(民法)が適用されます。相続人の国籍は関係ありません。つまり、外国人妻も日本人妻と全く同様に相続できます。日本人でないと相続できないといわれ、「帰化(日本国籍となること)」された方があったそうですが、その必要はありません。

 

【海外にある財産について】
妻の国に夫が不動産や預金を持っていることがよくあります。
遺言があれば遺言通りの相続ができる場合がありますが、なければ不動産や預金のある国の相続法によらなければならないことがあります。現地の裁判所や弁護士の費用が高額で、遺産が少額な場合費用倒れになることがあります。海外の預金には、相続手続きを回避できるjoint account(共同生存者口座)、payable on death account(死亡時支払口座)等があります。国により様々な口座、手続きがありますから、予めよく調べておかれるとよいでしょう。

 

3.夫が外国人である場合の相続

相続には原則として、夫の国の法律が適用されます。
ただし、その国の法律によっては、日本法が適用されることもあります(これを「反致」といいます)。また、遺言で準拠法を選択でき、日本法を選択することができる国もあります。ところが、外国の国際私法や相続法を調べることは容易ではありません。国によって対処法が異なりますので、自国に帰られた時、予め自分の国の国際私法と相続法を調べて、最善の方法を考えておくべきです。

 

とはいえ、それは法律の専門家でない者にとって簡単なことではありません。そこで、私がお勧めのナンバーワンの手法は、生前に公正証書により死因贈与の契約書を作成しておくことです。夫の死亡を条件として、夫と妻の間で贈与の効力が発生するという契約を締結しておくのです。その中で日本法を準拠法とすることを定めておけば、本人の本国法に関係なく、死後、日本法に則り手続きをすることができます。

 

その際忘れてはならないことは、必ず執行者(妻が執行者となることもできます)を決めておくことです。そうすれば、夫が亡くなった時、妻と執行者だけで不動産登記等の手続きをすることができます。妻にとって、死因贈与の契約のよいところは、契約ですから、妻の同意がないと夫の一存では変更できないことと、予め不動産であれば仮登記をして、順位を確保できることです。

 

遺言であれば、夫はいつでも書き換えることができます。また、夫が亡くなった時にはすでにその不動産は第三者のものになっているかもしれません。その意味でも安心ですね。

 

相続は先手必勝です、作戦を一緒に立ててみませんか?

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